本社は日比谷線広尾駅近くで、以前「探訪」でお伺いしたネクストウェア株式会社と同じビルにあります。
取締役 常務執行役員 技術部長 佐藤 亮様、取締役 執行役員 営業部長 岩本 佳久様にお話をうかがいました。
会社概要について
JASDAQ上場企業のネクストウェア株式会社のグループ会社です。主な業務は官公庁や自治体向けの受託開発です。また、グループの中で得意分野を活かした業務システムやソリューション開発、そして新しいお客様向けや新技術を活用した様々なシステム開発を手掛けております。
貴社設立のきっかけは
「先代のオーナーが、1974年10月に立ち上げました。今年で46期目です。私は設立時には入社していませんが、聞いた話ですと設立当初は4~5名で立ち上げ、順次お客様の信頼を得ながら着実にやってきたということです。」
「2006年にネクストウェアグループに譲渡し代表も変わりました。会社は当初、秋葉原にあったのですが、譲渡を機に広尾に移転してきました。会社に関わるあらゆる環境が変わりました。私自身は秋葉原に会社があったときに入社し、その頃はアセンブラー言語などを使って開発をしていました。ネクストウェアグループに入って、現在は技術部の責任者と、自分自身のキャリアも変化してきています。」
ご苦労されたことは
「当社の場合、自治体関連の受託開発案件が多いのです。受託の難しいところはキャッシュフロー管理ですよね。検収が年度末に集中し、そこで請求できる。そこまで耐えしのぐ。そういう経営が長年続いていたのです。苦労したことの例は、東日本大震災が起きた時に、各自治体はすべての案件をストップしたんですね。東北地方方面はそれどころじゃないというのはわかるのですが、被害の無かった例えば九州の県でも、災害地への支援や、自分のところで災害が起きたらと、お金を外に出さなくなったのです。もともと案件があったものが、全て止まってしまった。その翌年には仕事がガクンと減って、エンジニアが相当余ってしまい、厳しい時があったのです。売上も一時的にだいぶ落ち込みました。その時は一番苦しかったですね。」
「現在は、グループの中に入って、グループ内の仕事もできるようになり、いろいろ案件を紹介してもらい、仕事量もある程度平準化でき、経営の形が良くなってきました。」
「どうしても官公庁案件ですと期末に業務が集中し、人が足りないという事態が出きます。そこには協力会社さんに入ってもらって、業務ボリュームを維持していくということもできており、だいぶ昔とは変わってきています。」
貴社の現在の状況について
「売り上げで割合が一番多いのが、官公庁自治体系のシステム開発になります。開発事例として自治体向け防災システムや官公庁向け道路管理システムなど様々な開発実績があります。」
「ネクストウェアグループに入ってからは、それらを発展させつつ、ネクストウェアで受注している案件や、グループ会社である、ケーブルテレビのソリューションを提供しているネクストキャディックスの製品づくりなどに係わっています。当社はグループの中で、開発に関しては一番の強みを持っています。その強みを生かしながらグループ全体に貢献させていただいています。」
「エンジニア数は、40人弱というところですが、年齢層はバランスよく構成はされていると思います。残念ながら、採用関係が非常に厳しくなってきていますので、昔はものを作るところに苦労をしていたのですが、現在はどうやって人を増やし会社を維持発展させていくのかが一番の課題になっています。」
貴社の強みについて
「強みは、官公庁の自治体関係のシステム作りを長年やってきていることですね。特にシステムに付随するハードウェアからその接続を含めて、データ収集・演算、そしてインターネット上での公開やメール配信まで、いわゆるシステムの入り口から出口までを一通り対応できるという強みを持っています。」
「受託開発がメイン業務ですので、いろいろな形でエンジニアが活躍できる場所があります。プログラム開発だけではなくて、マネージメントや案件交渉含めて様々なフェーズでいろいろな人と掛け合っていけるところですね。その中で個々人のキャリア形成などを行っています。ただ当社の規模では限りがありますので、グループ全体で何か新しく大きなものを立ち上げていきたいと、頑張っているところです。」
これから力をいれるところは
「特にこれから力を入れるところですが、現在ネクストウェアグループ全体で、新規事業推進部という組織が新設されました。グループ内から何名か集まり、ブロックチェーン、AI、ビッグデータ、カメラ認証などを組み合わせながら、いかにソリューションとして提供していくか、技術要素を含めて検討しているところです。」
「それらを軌道に乗せていくことが大きな課題になるのですが、当社の若い人材もまじえ、グループ内の人的交流も含め全体で協業しながらやっていきます。とにかく新しいことに挑戦し、変化していかないと生き残れないとみんな危機感を持っています。そこが今我々の進めているところです。」
受託開発へのこだわりについて
「新たなお客様と受託案件でお取引させていただいたとき、利益が出たら御の字だと思っています。利益が出てくるのは、そのあとの案件のリピートだと思います。お客様のいろいろな癖が分かり、見積もり段階でのリスクや、行間に隠れていて更に深く掘り下げていかなければいけない要件とか、そういうことがだんだん分かってくるのです。受託業務は、お客様にリピーターになっていただくことが大前提ですね。案件ボリュームも増えてきますし、緊急の時もいろいろと相談に乗ってくれます。逆に無理な相談をうけることもありますが、繰り返しお付き合いできる関係を築くことが、遠回りに見えてもそれしかないと思っています。もちろん、きちっとした品質を担保するということが大前提です。」
「当社の場合、先程の防災システムなど、自治体、官公庁向けのプロジェクトが多く、国民とか住民の方々の生活にもろに影響するようなシステムを作っている緊張感があります。それが他の受託開発にも活かされているのではないかなと思っています。」
「また、社員は苦労をしていますが、やりがいを感じられる場面というものがあると思います。例えば、九州のある県の防災システムを担当している社員は、東京に台風が来ることよりも、そちらの県に台風が来ることを気にしているのですよ。いくらテストをしていても、実データでちゃんと動かなかったら新聞に載ってしまう。そこを無事に通り過ぎた時は、誰にも褒められないけど、自分の中で、作った物がちゃんと動いたという確信のようなものを感じ取れる場面があります。社員のモチベーションにもなるし、やりがいというのも感じられるし、社員が定着してくれているひとつでもあるのかなと思っています。」
「もちろん、失敗もあります。やってしまったことに対しては真摯に受け止めて、どのように改修していくか、次起こらないようどうすればいいかというのを、対策していかなければなりません。1回の失敗が結果的には次の案件時、もう少し厚い信頼を得られるということも起こりえます。」
「特に防災などの業務は、日本の中だけでなく、海外からの仕事も出てきています。東南アジアなどの発展途上国です。日本の中では、どんどん整備が終わっていきますので、我々も外に向けてチャレンジしていかなければいけない。開発は日本ですが、最後ハードウェアとの接続や最終確認は、どうしても現場に行かなければいけない。担当のエンジニアに東南アジアにあちこち行かせてしまって苦労をかけてしまっています。」
人材採用について
「採用については、目下の最大の課題です。採用推進室というものを親会社に設置し、当社も含めて、トータル的に採用政策を実施しています。ネクストウェアグループとして採用条件はほとんど一緒なので一緒に採用活動をやっています。それぞれの特色を説明しながら3社でやっていく。グループ全体で高専から毎年6~7名採用しています。まずひとつは『プロコン』という、高専のプログラムコンテストがあります。その協賛と事務局をやっている関係、私も審査員もやらせていただいているのですが、高専の先生方とは長いお付き合いをさせてもらっています。幸い当社にも直接高専から推薦で採用できるので、そこで1~2名採れるという土壌はあるのです。しかしやはり四大生のほうの採用は厳しいですね。」
「専門学校についても、やはり学校とのつながりが大きいと思います。METSAでの共同求人委員会の活動は存じ上げていなかったのですが、すばらしいと思います。どの企業さんも採用は一番の課題だと思うので、大阪に採用推進室の室長がいるので、それを連れて一度委員会に是非参加させてもらいます。」
人材育成について
「グループ全体として、今年からキャリア推進室という組織を準備しました。そこで『iCD (i コンピテンシ ディクショナリ)』という業務タスクと能力スキルを体系化したものを、人材育成のツールとして利用することに決めました。(先日、ネクストウェアはiCD活用企業のシルバー認証を取得) 現在、そのコンサルティングの資格を持っている人材を配置し、グループ全体に『iCD』を導入しようとしているところです。業務タスクを細分化しスキル辞書との連係を計っていきます。連係が1万くらいあるのですが、A、B、C、Dのランク付けを、個々に1枚ずつ作っていく。それらのマッピングを重ね合わせることにより、技術者は自分のどこをスキルアップすればよいのか、企業や経営層としては、個人の評価や、会社の強みや弱みがどこにあるのか、戦略的にどの人材を強化すればよいのか考える材料になることを期待しています。」
「一方で、大学や専門学校で『iCD』を採用している学校さんがあるようで、授業で教える時に『iCD』を意識して学習させる。そうすると卒業時に、『iCD』を人材育成のツールとしている企業だけを就職先を選ぼうとする。そのような意識の高い学生さんが会社を評価する一つの尺度になってくると思います。」
「導入し継続発展していければ、人材育成も大きく変わっていくのかなと思っているところです。勉強していかないと分からないことが多いのですが、とにかく代表の豊田からは、コンサルティングの資格を取れとハッパをかけられています。」
METSAへの要望について
「METSAのほうにあまり参加していないので、要望とかを言える立場ではないのですが、今回の探訪の機会があったので、METSAのホームページを見させていただいた中で、加入会社一覧がありますよね。すこし情報が古いのではないかと思います。情報のメンテナンスや、こちらでできるものがあればこちらで行いたいと思います。会社PRのところも、記入すべき情報の標準化をしていただけると判断しやすいと思います。例えば、社員数や、当社であれば、受託開発が8割で、40人弱いますよと。そうすると何人で受託開発をやっているのかということが見えたりします。共通の情報が1~2行くらいであれば、ぱっと見た時に、興味を持って会社のホームページに見にいってくれるといいですね。」
「商談会には出てないのですが、そのあとの懇親会などで、いろいろな方とお話をさせていただいています。それがきっかけで会社訪問させていただいたり、組合員の会社のエンジニアが当社社内で稼働することが決まったりしています。」
組合との関わりについて
「実は当社とMETSA組合の関わりは割と古いのです。もう10年ぐらい前になりますが、ISMS認証などは、実は、組合員でもある認証機関、DNVビジネスアシュアランスさんにお願いし取得いたしました。今日実はDNVさんの監査員が来ていて兄弟会社のネクストキャディックスの審査をしています。だからDNVさんとは長いお付き合いです。私たちも受託業務をやるうえで、ISMS認証は必須になりますし、役に立っています。」
社員の働き方について
「今後の大きな課題は、働き方改革です。有給休暇の計画取得、長時間労働の是正、柔軟な働き方などへの対応を早急に実現していかなければなりません。」
「実現するにあたり、例えば受託開発の成果物の納期を守るために、人を増やし個人の負荷を軽減していく。そうしますと単価や見積の価格を上げざるを得なくなります。お客様に説明しご納得させていかなければいけないわけです。同じ価格でできなくなってくると思います。難しいですが、この先の大きな課題になると思います。」
「開発の仕事は、途中から違う人が『交代しますのでよろしく』ということができないですよね。引き継ぐために並列で一定の期間稼働しないといけない。実質、人を増やすイメージです。そうすると価格面で跳ね返りますし、そこを理解していただけるように持っていかなければいけない。わりと大きな会社さんは、そのようなことはきちっと取り組まれていると思うのですが、当社の場合は、社員の働き方を守るためにかかるコストをお客様に認めていただくという話をしなくてはいけないようになると思います。」
「あと、最近困ったことがあったのですが、当社では勤怠システムで勤怠の管理をしています。残業時間などがリミット近くになりますと、自動的にアラームが配信されてくるのです。それでお客様と交渉しますし、本人とも話をします。しかし本人からは、残業させてくださいと。そういう人はどうすればいいのかなと。だからと言って好きなだけ働いていいよということは絶対できないので。」
「テレワークとか在宅ワークも課題ですね。要は在宅勤務での働き方を、どのように管理していくかということです。難しさはありますが、そこに対応しないと採用に影響し、育児、介護などでの離職が出てくると予測されます。テレワークや在宅ワークを運用できれば、介護しながら自宅で業務をすることも可能ですよね。そのルールや仕組み作りもそうですし、セキュリティですよね。仕方なく会社を離れた方たちが辞めないで働ける。今ネクストウェアで1人だけいるんですよ。介護在宅です。もともと自己管理がしっかりできる方なんで心配はいらないのですが。ただ一般的な展開となるとしっかり管理する必要がありますね。」
「働き方改革を進めていくと、成果を何で見るかという話になってきます。時間ではなく成果で見ないといけなくなる。コストは増えていくし逆に効率を上げていかざるを得ない。しかしそれを測るのはなかなか難しいです。まだ具体的なところまで詰められてないのですが、ここ何年か以内にいろいろな形を考えてトライしないといけないなと思っています。」