通商産業省 関東通商産業局 関産認協第1476号

METSA

組合員探訪

第30回訪問 2022年7月7日(木) 株式会社ISLWARE(アイエスエルウェア)

組合員探訪
株式会社ISLWARE(アイエスエルウェア)
本社住所
〒108-0074東京都港区高輪3-23-17 品川センタービルディング4F
代表者
代表取締役 松村一彦 様
会社設立
2006年12月4日
組合加入日
2007年11月1日
訪問日
2022年7月7日(木)11時30分~13時30分
樽屋監事、顧問小池が訪問いたしました。

株式会社ISLWARE松村代表とは、2016年2月23日に「第12回組合員探訪」でお会いしております。
第12回訪問 2016年2月23日(火) 株式会社ISLWARE|首都圏ソフトウェア協同組合 (syutoken.or.jp)
この度、IMAGICA GROUPの株式会社フォトロンに株式を譲渡し、2022年4月1日に子会社になりました。 当社による株式取得(子会社化)に関するお知らせ | 株式会社フォトロン (photron.co.jp)
松村代表に、前回の「探訪」から会社の成長や変化について、そして株式譲渡に至った理由などについてお話を伺いました。

前回の「探訪」からの会社の成長・変化について

早いもので前回の『探訪』から約6年半たちました。当時、事業承継問題は「バランスシートもきれいになりましたので、遅かれ早かれ現実的な問題になり、タイミングを考えながら検討していきます。」と答えたと思います。
フォトロン社との関係のところに焦点をあてますと、フォトロン社のインテグレーション案件のうち開発部分を当社に発注し請け負う形になります。2021年には、当社の売り上げの約7割がフォトロン社との取引になり大幅に取引高が増えました。

フォトロン社について

フォトロン社は、IMAGICAグループの事業会社です。
映像編集システムや映像ファイルに関わるシステムを、ハードウェア機器などとインテグレーションし、放送局や制作会社に納める事業を行っています。
映像の世界が急速にIT化、デジタル化しており最先端の技術を持って顧客のご要望にお応えしています。

株式譲渡をされた理由と選択について

フォトロン社と仕事を長くやってくる中で、受託だけの関係ではなく、もう少し新しいことを共同でやりましょう、という話が出てきました。当社の課題としては、仕事はどんどん増えている時期でしたが、基本的に請負の仕事ばかりでした。自社サービスや自社プロダクトの企画・開発・販売ということを、長年事業計画に入れていましたが、手についていない状況でした。この話は当社にとってメリットがあると思いました。
それで2019年にまず業務提携契約を結んだのです。ただ、コロナ下で具体的な話は進んではいなかったのですが、2021年に入り共同プロジェクトが急速に動き始めたのです。
グループ内でIT 関係の技術者は分散していたので、フォトロン社に集約しようという動きがありました。そこから具体的な話が進んだという感じです。例えば、クラウド系の新しいサービスを立ち上げるプロジェクトに、当社の社員がプロジェクトリーダのポジションにつきました。まだ資本関係はなかったのですが、フォトロン社の組織図の中に当社の社員の名前がしっかり載っていました。
先方にとっても当社は無くてはならない存在になったということになります。
私の年齢も還暦を迎え、あと何年できるのかということと、株価試算をすると社員への譲渡は困難であることも理由の一つです。
2021年6月に、フォトロン社から資本提携に関する考え方や進め方の提案と説明がありました。前に進めましょうと意向を伝えますと、デューデリジェンスが始まりました。

会社が評価された理由について

評価されている点は、請負で開発業務を行っているので、そのプロジェクトをしっかりと仕上げるところですね。放送局やエンド顧客などからフォトロン社が受注した仕事を納期までに要求されたものを作り上げて納める。そしてきちっと稼働させる仕事を着実に推し進められた点だと思います。当社のマネージャーがしっかりやるタイプなので、極端なことを言えば、マネージャーが欲しかったっていうことになるのかもしれないですね。(笑)
それから当社の業績の回復により20年度に借り入れがゼロになり、きれいな経営体質になりました。それで、デューデリジェンスでマイナスな評価や要素がなかったので、スムーズに進めることができました。
また株主は私ともう1名で、スムーズに譲渡できたから良かったです。持ち株会とかは面倒ですね。オーナーだけが全部持っていたほうが話は早いです。

DD(デューデリジェンス)でやったことについて

デューデリジェンスはかなり大変でしたね。資料を結構大量に提出しました。大きくは財務系と労務系ですね。決算資料から就業規則関連など全部提出しました。
割とちゃんとやっていたので、あまり質問も多くなかったです。労務の関しては、やはり時間外労働に関する管理について調査されました。しかし当社はあまり時間外労働がないので特に問題は指摘されませんでした。給料や手当てなどについて細かくチェックされました。それと当社の場合、賞与は一時金支給じゃなくて分割支給をしているので、どうしてそうしているのか聞かれました。
個々の社員の評価については特に聞かれませんでした。もちろん賃金台帳などは出していますが、根本的に給料は絶対当社のほうが低いのはわかっていますので、基本的に先方もまるごとっていう考え方でした。社員の選別は一切なかったです。

社員の方への説明のタイミングや反応について

2021年11月1日(月)にHP上で公表にするのに、社員に話したのは、10月29日(金)なのですよ。土日挟んでいますのでそのままプレスリリースです。
オンラインでしたが社員全員に話をしました。仕事も特に変更なく続けられるし、規則なども変わらないと。社員も一番不安を感じるところだと思うので丁寧に説明しました。
上場企業なので株などインサイダー取引などが絡んできますので、本当に口外できないのです。それは結構きつかったですよね。事務の社員にも口外できませんでした。知っていたのは私以外もう1人の役員と3人のマネージャーだけです。彼らとは一緒に話をしてきたのですが、一般の社員には話をしてなかったです。
だから社員に話をしたときはすでに決まりましたという感じですね。その時の反応は、驚いたという社員はもちろんいましたけど、だからどうのこうのということにはならなかったです。

プレスリリースされたときについて

プレスリリースされた時は、電話や手紙がたくさんきました。証券会社とかですが。株式の情報で書かれていることは適当な情報というのがよくわかりました。たまたまIMAGICA GROUPがIT会社を買収したからよく書かれるのです。全然当社がどういう会社かって分かっていないのに、ほんと適当ですよ。

社員への業務の引継ぎ準備について

私も2020年に還暦を迎えたので、自分があと何年やれるのかということはいつも考えていました。世代交代を準備するために、2019年度から2021年度の3年間で世代交代をするぞって社員に宣言していました。私のやっていたことや現場レベルの仕事をマネージャー達にどんどん降ろしました。それゆえフォトロン社との関係では、私がいなくても多分大丈夫な状態になりつつあります。
私は元々IMAGICAに所属していたので、その人脈で仕事をずっとやってきていたのですが、IMAGICAの同世代がどんどんリタイヤしてきているので、知っている人はグループ会社含めていなくなりました。下の世代でつながりを作らせることをずっとやってきていたのです。実務上はなるべく私が顔を出さずに、若い世代同士やり取りさせることをやってきています。
今年の3月で設立15周年を迎えることができ、そのタイミングでフォトロン社からも話が来たので良いタイミングだったと思います。私の考えに対して反対の意見はなかったですね。そういういろんなことのタイミングが全部一致したような、そんな感じですね。60歳というのが早いのか遅いのかは人によって考え方がまちまちだと思うのですが、現場で会う相手はどんどん年下の人ばかりになってくるので、私がいつまでも出ていたら相手もやりづらいだろうとか、そういうのは感じましたね。

譲渡されてから変わったことについて

フォトロン社から一応非常勤で取締役2名と監査役に来ていただいています。
譲渡先が上場会社なのでいろいろと手続きが面倒です。これまでマネージャーたちと行っていた月次の幹部会議に顔を出すようになりました。逆に、当社のリソースの空き具合が先方にもオープンになっているので、そこを埋めてもらえるというのは計画が立ちやすいです。そこが子会社になったメリットですね。
某公共放送局の新社屋建設が始まり、早くて2025年から稼働予定です。だから新社屋のプロジェクトにうまく乗れれば、大きな仕事は見えてくる可能性があります。今はまだどうなるか分からない状態から当社の社員が関わって受注に向けて動く感じですね。今までは受注してからお話をいただいていましたが、それがもっと早い段階の受注前調査から関われるようになりました。
また共同プロジェクトの進め方で、工程管理やソースの管理、ドキュメント作成、メンテナンス管理など積極的に協力していき、両社のスキルが蓄積されていくのではないかと期待しています。
技術者の採用や育成方針など、これからすり合わせをして行くことになると思います。当社側は開発技術者を育成する考え方です。フォトロン社には優秀な人は多いです。当社よりも採用面は有利ですから、ある程度方針が決まってくれば、全体で必要な人材を親会社で採用していくということもできるようになりますかもしれないですね。
当社側では、自社サービスに手がつけられていない状況でしたので、業務の質を変化させられる余地が出てきたと期待しています。

ご自身の立場と今後について

譲渡の条件として、私が引き続き社長をやるというのが条件でした。社員が退職されても困るからということもあると思います。ただ役員の任期は1年なのです。いつ退任になるかわからない。とりあえず2年はやれと言われています。65歳までやればいいかなとは思っています。身体は元気ですけど、頭がやっぱり駄目ですよ。
今までは自分で決められていたことが簡単に決められなくなります。計画策定や実績報告に時間を費やすようになりました。報告のための資料作成や準備、取締役会の招集や議事録回覧など、これまでやっていなかった業務が増えました。当社の規模の会社でそれをやる必要あるのかという思いはありますが、早く慣れていきたいです。期末賞与も今までは利益が出たらすぐ還元という形で出していたのができなくなりました。
税理士事務所も変わりました。今までは私の学生時代の友人にお願いしていたのですが、IMAGICA GROUPの会計監査事務所に一元化されました。基本的に経営は任されていますが、大きなお金が動くとか、法律やコンプライアンスが関わるような事案は決められないですね。福利厚生関係は関東ITSを続けようと思っています。中小企業に適用されていたものが適用できなくなります。例えば助成金などです。METSAに加入していることは大丈夫のようです。
今はもう現場はほとんど離れてしまっているので、今後、これまでとは異なる観点で、自身のモチベーションを高めていくことが必要だと感じています。

会社の継続性と一番気にかけていること

会社がずっと続くかどうかはわかりません。私のリタイア後に経営したいと思うものがいるかどうかです。多くの社員は開発業務を続けたいと考えていると思います。会社がどうなるにせよ、今の社員たちがグループの中でいいポジションにつけるようにしてあげないといけない。親会社には優秀な技術者がたくさんいます。その中に入っても当社のメンバーがそれぞれの強みを活かして業績に貢献し、評価につながるようにすること、それが私の最後の仕事かもしれません。

探訪後記

会社の経営者は、誰もが歳を取り、いつまでもやっていられる状態ではなくなります。会社、社員の成長や継続のためにも、いつかは事業承継に覚悟を持って決めていく責任と宿命を持っています。
松村代表は、期間を設けその間に事業承継を進めていくことを社員に宣言し、実行に移しました。会社の状況や取引先との関係、社員の処遇や、本人の状況や立場など様々な判断材料を確認し、一番良いタイミングで株式譲渡を実行いたしました。
上場会社のやり方にと戸惑ながらも、社員の今後のキャリアアップを大変気にかけております。ご本人は、仕事フェーズを少しずつ縮小されながら、トライアスロンなどの趣味や今までできなかったことを広げていくつもりのようです。
まだまだ、お若いので今後どのように取り組んでいくのか期待したいところです。

組合員探訪一覧へ戻る

組合員探訪

ページの先頭へ戻る